ギタリスト、ピアニスト、作る曲がちょっと違う。

ここでギタリスト、ピアニストというと語弊があるかもしれません。
きちんと言い直すと「主にギターを使う人」「主にピアノを使う人」となります。
今回はその両者の違いについて、自論を展開してみたいと思います。

例えばどんな曲?

まず、少し古い楽曲をサンプルとして。

個人的には「ギター曲」などと呼んでいますが、
例えば、The Rolling Stones “Brown Sugar” (リリース 1971)。
いかにもロックな感じの、ギターのリフから始まる曲です。

一方、「ピアノ曲」と呼んでいる楽曲のサンプルは、
例えば、Elton John “Your Song” (リリース 1970)です。
ピアノのアルペジオから始まる風流(笑)な曲。

この2つの世界的なヒット曲を比較します。

そもそもまったく違う曲なので、当然全部違う、と言われればそれまでですが。。
でもなんとなく、何か根本的な違いを感じると思います。

その違いとは一体何か?

ここでは敢えて、「楽曲」・「アンサンブル」という部分に焦点を絞って考えてみたいと思います。

曲の一番盛り上がるところで比較

まず「ギター曲」であるBrown Sugar。

やはり印象的なのはイントロ、ギターのリフですね。

このリフをギターで弾いたことがある人ならわかると思います。
このリフ、ひとつの左手フォーム(セーハ+中指・薬指)のまま、フレットを上下に変えているだけです。
とても簡単に演奏できます。
しかしこれをピアノで、まったく同じ音階を弾くとなると、そこそこ慎重にならなければなりません。

さて一方、「ピアノ曲」であるYour Song。
この曲は、全体的にいい感じなのですが、あえて盛り上がるところと言えば、やはりサビの「I hope you don’t mind,…」というところでしょうか。

ここはいわゆる分数コード。
右手でコードBm(B,D,F#)を弾きながら、左手でベース音をB→A→G#と下げていくという流れ。
とても簡単です。
しかしこれをギターで弾くとなると、あれ?どうするんだっけ?となります。

頑張って弾けなくはないのですが、「あー!完全に指が届かない!」「ぜんぜん無理!」となる人も多いでしょう。
これをすぐに弾ける人は、たぶん上級者です。

比較から言えること

さて、この「ギター曲」「ピアノ曲」の比較で言えることはなんでしょうか?

 ・ギターを弾く人が、ギターで弾きやすい曲を作った。

 ・ピアノを弾く人が、ピアノで弾きやすい曲を作った。

ということになります。

でも「ただ楽して作った曲だな」というわけではありません。世界的にヒット曲ですから、多くの人の心を掴む素敵な曲と言えます。

そして、ここからは完全に私の自論ですが。。。
つまり作曲とは、頭の中にあるメロディーやハーモニーをそのまま楽譜に記録する、というのが本来のあり方ではあるが、実際には、楽曲を作るための道具(楽器)のしくみ・特徴が、創作物に多大な影響を与えている
そう言えると思います。(多分これ、間違いないぞ!)

更に極端に言えば、人間が楽器を使って作曲しているのではなく、楽器に使われて作曲している、となります。

あれ? これはつまり、ジェームズ・J・ギブソンが提唱したアフォーダンスの概念。

難しいことを、更に難しくして、カオスの世界へ。

あれこれ複雑なことを考えると、自然と「アフォーダンスでアホざんす!」などというダジャレで全てをぶち壊したくなります。が、落ち着いて進めましょう。

さてこの理論、あらゆるところで応用されていると私は考えています。

例えばコンビニの店舗デザイン。

まず外観。煌々と光る看板、店舗全体は白を基調としている。お店に入ってすぐのところに雑誌コーナーがあり、その近くに日用品。その先には飲料や食品。棚の上のほうには少し高級なもの、下の方には駄菓子などの子供向け商品。多くの人が最も目にする高さの棚には、売れ筋のもの、あるいはお店が是非とも「売りたいもの」が並べている。なんとなく歩けば、うっかり欲しくなるものが次から次へと目に飛び込んでくる。そしてついに商品を手に取り、ふと周りを見るとそこには店員さんとレジ。。

これはコンビニ業界が、長年の実験・検証により培ったものでしょう。あらゆるノウハウが、ふんだんに盛り込まれているのがよくわかります。

しかしこれを専門家たちは、以下のように言うかもしれません。
「非計画購買を促すために実施されている、インストアマーチャンダイジングのスペースマネージメント」

は? なんのことやら。。ひけいかくこうばいをうながす?

非計画購買とはつまり、衝動買いのこと。それを促すための管理をしているということです。

私は知らぬ間に、誰かによって計算されたとおり、衝動買いをしていたわけです。(笑)

そうか、私のウッカリ衝動買いは、『私の貧弱な精神から生まれる欲望や惰性が原因』ではなく、企業の策略だったのか!

いやいや、そんな黒い策略だと言いたいのではなく、「よくできた仕組みだな〜」と感心している、と言いたいのです。

人間は無意識のうちに、周囲のモノに影響を受けながら、いろいろ考えたり、心を動かされたりしているんだな〜と思うのです。

良いこともあり、悪いこともある。

そしてギター or ピアノのお話♪

私は稚拙ながら一応ギターを弾けるので、ギター曲が結構好きです。
でも最近、分数コードを弾けるようになってきて、ちょっとした変化が起こりました。
「やっぱ分数コード、いいな〜♪」という感じで一人悦に入って、ポロローンと弾いていたら、「この曲もいいねぇ、あの曲もいいぇ、あれ、そう言えば全部ピアノ曲だな。。」となったのです。

この感覚、ギターという楽器の壁を、ちょっとだけ越えた瞬間なのではないかと思うのです。
そしてその壁の向こうに、今まで見えてなかったものが見えました。
何が見えたかと言うと、自分の好き・嫌いの向こう側の、なんだかワクワクする世界です。

さて、これまでをまとめると。。

おそらく人間は、生まれた時代や場所により、好みや考え方などある程度限定されるのだと思います。

それは、ギターが弾けたらギター曲が好きになり、ピアノが弾けたらピアノ曲が好きになるのと似ています。

その偶然行き当たったところで培われた感覚は、世界的なアーティストが多くの名作を産んできたことを見ても、とてもパワフルでクリエイティブです。いや、それこそが創作の源なのかもしれません。

一方、私がギター曲からピアノ曲が好きになったように、自分の好みの範囲の外側にあるものと接することで、それまで知らなかった素晴らしい世界がぐんと広がることもあります。これはこれで、とても楽しい感覚です。まだまだ世の中には自分の知らない素晴らしい世界が沢山広がっているんだ!と思いながら暮らす。そんな素敵なことはありませんね。

ではまた!!

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