版画に注目する訳。

私は版画がとても好きです。好きと言っても、見る方です。

版画の作家さん

特に好きな作家さんは平岡瞳さん。多分私よりも若い方です。その絵の題材、絵の構図、そして版画特有の風合いをさりげなく、そして鋭く見極めたような陰影。私は完全に心を掴まれています。なんというか、つまりキュンキュンしてるのです。本来、それほど好きなら絵を購入しても良さそうなところですが、いろんな理由があり敢えて所有は避けているのですが。。でも画集は2冊持ってます。なんと、ご本人が手売りしているときに購入できて恐悦至極に存じました。(ご興味のある方はこちらへどうぞ「平岡瞳のイラストレーション」)

こちらは絵本↓

別の作家さんもご紹介。

「山の版画家」として知られる畔地梅太郎(1902-1999)。何十年も前に活躍していた人とは思えない、なんともかわいい作品。なぜこんな素晴らしい作家さんを知らずにいままで過ごしてきたのかと、慚愧の念すら感じます。

もう一人、最近知った作家さん。

と言っても昔の人ですが。川西英(1894-1965)。「神戸百景」という名作はこちらで紹介されています→「木版画版 神戸百景 川西英 〜百の版木を刻む旅〜」。多色刷りですが、都市の風景を眩しく、心地良く描いています。描く人の軽やかな心持ちが伝わってきます。

そして最後に。

フランス・マシリール Frans Masereel (1889-1972) という木版画家。てっきりフランス人かと思ってましたが、違いました。フラマン人だそうです。え?フラマン人?(詳しくはwikipediaフラマン人をご覧下さい。)アートに国籍は関係ありません。私が特に好きなのは作品は「The City」。

この作品、海外では文学のジャンルとして位置付けられているようです。(wikipedia文字のない小説 Wordless novel

私はこの本をアマゾンで購入しましたが、どうやら海外からの輸入だったようで届くまでに3ヶ月程かかりました。アマゾンで3ヶ月!(今ならKindle版があるのですぐに見れますが。)それはともかく中身は、本当にWordless!!文字が一切ありませんでした。ですから、なんとなくストーリーがわかります。無言でジワジワ伝わってくる都市の悲哀。私も東京という都市に住んでますので、なんとなく分かります。木版画でもいろいろありますが、こんなにシリアスなものは滅多にありません。

さて、百文は一見に如かず、です。ご覧いただき、版画が持つ独特な魅力、お分かりになりましたでしょうか。私はなぜか、この版画のもつ独特な風合いに、グイグイと心惹かれてしまうのです。

版画といってもいろいろあります。

木版画(ウッドカット)、リトグラフ、メゾティント、それから消しゴムハンコ。例えばエッシャーの絵も版画。いろいろあります。

最近は、リノカットというものが人気があるようです。コルクや木の粉から作られた”リノリウム”という板を使う版画だそうです。見ていると、木版画の木よりもスイスイ彫れて気持ち良さそう。これ↓を見れば雰囲気がわかります。

一方、こちら↓は民藝界のもっとも著名な作家、棟方志功の版画製作の様子。これを見ると、版画製作はまるで苦行のようにも見えます。見るからに集中力がスゴイんです。

でもやっぱり個人的には、木版画の風合いがいいなと思います。自然の材料、適度な粗さ、融通の利かなさ、から生まれる風合いなのだと思います。

版画は解像度を下げること

さて、なぜ版画に注目するのかと言うと、単純に「好きだから」ということもあるのですが、それ以外にも理由があります。

それは、世の中4Kや8Kなどと言って、画像の解像度はどんどん上がっています。私は仕事で8Kの開発に携わったこともあるので実感としてわかります。8Kにもなるとはっきり言って自分の視力を超える解像度です。そこまでいくと、画像と本物の見分けがつかなくなってきます。そして今後、デバイスが安価になってくれば、だれでも超高画質を利用できるようになります。そういうテクノロジーの進化も好きなのですが。。

一方、波紋堂は超弱小企業です。そのような大きな資本が動く世界の住民ではありません。いやむしろ、だからこそ、逆行するくらいのことをやらなければなりません。大きな資本の会社にはできないことを。

ですから、版画がまさにその方向性を示しているのです。

木に絵を彫る。どんなに頑張っても微細な線は描けません。それは「木の性質」という制約があるからです。そしてアーティスト達は、この制約の中で無限の可能性を追求しているのです。版画で何を描くか? それは、波紋堂という小さな会社で何をすべきか、ということを教えてくれる存在なのです。

波紋堂も一応、版画やってます

波紋堂は作品ひとつひとつに名前を付けて、ロゴも作っています。そのロゴの多くは、消しゴムハンコで作っています。例えばこんな感じ。

END OF BOOKEND ロゴ 現物
END OF BOOKEND ロゴ 現物

End of Bookend Logo
End of Bookend Logo

まず原案を考え、トレーシングペーパーに鉛筆で書き写し、消しゴムハンコ用の消しゴム(はがきサイズのものがある。)に写す。これをIllustratorに取り込んでトレースする、という作業をしています。このような感じのものは、最初からPCで作れるかもしれませんが、やはり版画の風合いを出すためには、版画を作ってしまうのが、迷いがなくていい。

まとめ

好きな作家さんや巨匠を紹介しているページに、波紋堂の消しゴムハンコを載せるのは甚だ恐れ多いのですが、まあ余興ということでスルーしていただければと思います。

お伝えしたかったことは、版画の魅力。描いた絵を一度「木」などに落とし込んで、印刷する。そして、そこから生まれる風合いを愛でる。これは絵画でもあり、工芸でもあります。絵画が、わざわざ工芸の手間を追加しているのです。この手間は、意味のある手間なのです。

(その他、波紋堂のロゴが一覧で見れるのはコチラ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です