モンペン立ての「モン」は「山」です。
波紋堂の新しい作品、「モンペン立て」をご紹介いたします。(毎度拙い文章で失礼いたします。)
波紋堂がついに「普通」のペン立てを作りました。
波紋堂は今まで、人から「なんですかこれ?」と言われるようなものばかり作ってきました。例えばこのようなものです。↓
これらはきちんと実用的でありながら、ふだん馴染みのない、不思議な造形物としての存在感も持ち合わせています。
そして今回のモンペン立て。
きっかけは「普通のペン立てを探しているけど、意外と無い」という声を聞いたことです。
私自身も「確かにそのとおり!」と思い、早速作ることにしました。
しかしいざ作ると、波紋堂の場合、なんだかんだで一辺倒にはいきません。
なぜなら材料と製造方法が、そうさせているからです。
ただの四角い形ではあまりに味気なく、かと言ってそれほど複雑な形状は作れない。
ではどうしようか・・・
そうやって作る人を悩ませる、それが精密板金加工という工法なのです。
小ぶりなのに、色鉛筆24本入れても余裕。
サイズ感を感じていただけますでしょうか。普通の色鉛筆を24本入れた写真です。↓
色鉛筆を立てた瞬間、まるで殺風景な花瓶にお花を生けたときのように、急にパッと華やかな気持ちになりました。(やっぱり色鉛筆はいいですね!)
そしてやっぱりペン立ては、地味な方がいいのです。その方が「お花」が映えるからです。
もちろん、サインペン、ボールペンやカッターなども、どんどん入います。(でも入れ過ぎにはご注意を。)
鉄の重さは大切。
これだけいろいろと入れると、その重みで倒れるのでは?と心配になります。
でもこの「モンペン立て」、ガルバリウムという鉄の板でできています。だからそこそこの重さがあります。
だから意外と倒れません。(製品の重さ:119g)
写真では重さは伝わりませんが、まずは「見た目より意外と重い」とご想像いただければと思います。
龍安寺の石庭に、馴染んでしまうかも。。
モンペン立てのもうひとつの特徴。それは「枯山水的」であることです。
「吾唯足知」吾(われ)唯(ただ)足(たる)を、知る。
枯山水の庭として世界的に有名な龍安寺の石庭。
もし今コロナ禍でなければ、すぐにでもここに行ってモンペン立てを撮影したいところです。
でもやむを得ません。妄想で留めておきます。
いや、実際にそんなことをしたら「コラッ!」と叱られますので、やめておきます。
でも真面目な話、モンペン立ての抑えめな銀色と独特な形状は、枯山水にも馴染むのではないかと密かに思っています。
どこから見てもアシンメトリー。
モンペン立ては、どこから見ても左右対称にはなりません。つまりアシンメトリーです。
この形状を考えるときに、まずそれを前提としました。なぜなら、日本の美意識がそこにあると信じているからです。
お寺の建物の配置や、日本の庭園など、海外のそれと比べて特徴的なのは「アシンメトリー」という点だと思います。おそらくアシンメトリーの方が、より自然に馴染むからだと思います。宗教、日常生活、美意識が、自然と共にある。日本で長く暮らす人たちは、無意識にそれを感じ取っているのではないかと思います。
あちらはヨセミテのエル・キャピタンです。
先日NHKの日曜美術館を見ていたところ、萩焼の陶芸家、第十三代 三輪休雪さんが紹介されていました。
アメリカのヨセミテ国立公園にある一枚岩、エル・キャピタンを象(かたど)ったという茶碗や花瓶を作っていました。
これがカッコいい! 写真をここに貼りたいところですが、勝手にそんなことをすると叱られそうなので、参考用にリンクを貼っておきます。
株式会社黒田陶苑(しぶや黒田陶苑) 十三代 三輪休雪 (和彦)
しかし、なんとなく。。
あくまで、なんとなく、ですが。。
失礼を承知で告白しますが、コンセプトが似ていると思いました。モンペン立て。
どうも私は似たものに心を惹かれたようです。
十三代三輪休雪さんは「ヨセミテのエル・キャピタン」を模(かたど)ったそうです。
私の場合は山梨県の山でした。
ある日、特急あずさに乗って新宿から長野へ向かう途中。甲府のちょっと手前あたり。
霧が深くて幻想的な風景。美しく急峻な山々。
「針葉樹」「遠くの街並み」それらが「霧」によってグレーに輝いていました。。
その風景の記憶が、金属を眺めているときに、ふと繋がりました。
そうか、金属と霧の色は同じだと。
「和」にこだわっているようなのに、なぜ「モン」Montなのか。
単純にモンブラン(ケーキ)が好きというのもあるのですが、なんとなく「モン」という言葉の柔らかさが気に入ってます。
波紋堂の作品は板金ばかりですし、金属だから冷たい感じもします。それを少し中和する意味でも、柔らかい言葉を選んでみました。
ちなみに波紋堂の作品は、出来上がる度にロゴを作成しています。まず情報カードなどの小さな紙にアイデアを書き、それを消しゴムハンコ化することにより完成させています。ハンコや版画の独特な風合いが好きなので採用しています。
もし組織的にデザイン業をしていたら、もっと難しいことを考えて、分業でいろいろ作っていると思いますが、私一人で運営している会社ですから、ほぼ強引に、物理的に、デザインの統一感を出すために、そのような手間をあえてかけております。
まとめ
さて、この作品がこうやってリリースできるまでに約半年かかりました。
波紋堂では初めての、いわゆる「普通な」作品です。単なるペン立てです。
頑丈な金属製ですので、長く使えます。
長く使えるものですので、飽きのこない、シンプルで少し変わった形の方が良いと思います。
どうか皆さまに末長くご愛用いただけるようにと願っております。